それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
うな笑みを浮かべていった。いい眼をしてる。
  で、投げてるのか。
   そうだよ。
  愉しい?
   愉しいよ。
  なるほどな。 
  おれも仲間に入れてくれ。
 ぼくはかれらにそういった。かれらは笑った。そしてオレンジをしっかと掴んで、車道を走る車にむかってみんなで投げつけた。それは貨物トラックのフロントグラスに当たり、運転手はハンドルを誤った。こっちへむかってくる。そしていま、少年たちが逃げ惑うなかで、ぼくは「広告募集」の看板のしたで、ただ立ってるだけだ。かの女がふりむかなかったみたいに、この世界がぼくにふりむかないのなら、――どうにでもなっちまえ!




戻る   Point(2)