それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
うな笑みを浮かべていった。いい眼をしてる。
で、投げてるのか。
そうだよ。
愉しい?
愉しいよ。
なるほどな。
おれも仲間に入れてくれ。
ぼくはかれらにそういった。かれらは笑った。そしてオレンジをしっかと掴んで、車道を走る車にむかってみんなで投げつけた。それは貨物トラックのフロントグラスに当たり、運転手はハンドルを誤った。こっちへむかってくる。そしていま、少年たちが逃げ惑うなかで、ぼくは「広告募集」の看板のしたで、ただ立ってるだけだ。かの女がふりむかなかったみたいに、この世界がぼくにふりむかないのなら、――どうにでもなっちまえ!
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