それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
。望みがなくて、なにかを始めようって気分にもなれない。問題があまりにも山積みで、どっかで手をだせばいいのかが、まるでわからないと来る。アルコール、アルコール、アルコール、──ただそれだけをおれの脳(なづき)が呼びつづけてる。タイヤ専門店の裏に段ボール置き場を見つけた。そこでぼくは身体を丸め、浅い眠りを眠った。翌日、ようやく仕事が入った。それも10日契約。鹿ノ子台の医薬品倉庫で仕分け作業。おもわず、小躍りしちまいそうになった。
ぼくはふとかの女が棲んでいるだろう場所を探して走った。もちろん、見つかりはしない。けっきょく丘のうえにあるスーパーで酒を仕込むことにした。残り少ない金でだ。洋酒は大して置
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