それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
かい髪が愛おしくなるようなあの子、ミヤザキからきたかの女、かの女が笑みを浮かべて立ってる。倉庫の制服を着てる。けれども、そこで眼が醒めた。ベンチは暗いまんまだ。けっきょく次の朝が来るまで呑むことにした。朝になって口入れ屋に電話する。あしたの仕事がないかを聞く。けっきょく、そんなものはない。パンを喰いながら、時間を潰す。おなじ状態がずっとつづくみたいな感覚だ。やがて日が暮れて、夜になって、ぼくはジョルノに跨がる。わずかガソリンを気にかけながら。──いったい、おれはなにをやってるんだろう。仕事もできず、家にもいられず、孤立してて、それが恢復する気配もない。金はあと、3千円ばかりしかない。望みがない。望
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