それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
っくりだっていう。突き放してフロアの奥へ走る、主任は気味のわるい、口のわるい、品のない男で、あんなやつになんか負けたくない。でもおとついぼくはかの女にわかれをいって、そして翌る日、ふけたんだ。それでクビにされた。でも、いまはかの女は映画のなか、もっと若いころのかの女が映画にでてる、スクリーンの裏手まで、ぼくはいった。5階の男がさえぎる、キンジョウさんがなにかいってる、ケイシンや、もりか運輸、信州名鉄AとBやなんかのトラックがいっぱいで、なにも見えなくなる、それでもぼくはかの女のなまえを呼ぶ。
  ナカクボさん!
 おなじ町に棲んでたあの子、おなじ歳だったかの女、バンドをやってたあの女、みじかい
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