それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
が追って来る。なんだってこんなところにいるんだ!――まるでパラノイアみたいにぼくを追いかけるかげ。玄関にたどり着き、扉をあける。やつがぼくの肩に手をかける。一瞬ふり返る。でも、その顔は見えない。やがて照明倉庫の出庫口まで来る。エレヴェータに乗って、2階へあがった。急ぐ。もういなくなったかの女に与える辞を探しながら。もうじき去ってしまうかの女に伝える辞を探しながら焦る。倉庫は照明器具を扱ってる、かの女はそこでぼくと働いてたんだ。フロア・リーダーのアズマがぼくを怒鳴る。そして追いかける。ぼくは走る。やがて暗がりのなかでピッキングのリストがちばらり、鬱病の男がぼくを掴まえていう、きみはぼくの息子にそっく
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