それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
れかの室にいた。ぼくは起きあがってあたりを見る。
やっと、気ぃついたか?
ずいぶんまえに見たことのある顔だった。できれば見たくない顔だった。おそろしく退屈で、冗漫で、怠惰で、笑えもしないし、泣けもしない、もはや怒りの湧いて来ない顔だ。感情らしいものを見いだすのも億劫になる顔。そして鼻。
おれのこと、懐いだしたか?
ぼくはいった。
いいや、おまえなんか知らない。
ビールがまだあるでえ。
いいや、こんなところにはいたくないよ。
まあ、そういうなや、ほら、まえにいった子ぉ、連れてくるから。
わかったよ、さっさと連れて来いよ。
ああ、いま電
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)