それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
いはスーパーの屑入れに潜り込み、あるいは医薬品の倉庫や、冷蔵倉庫にもいったりした。家にはいられなかった。父との折り合いはどうやってもつかないからだ。日銭稼ぎの、当てのない日がつづくなか、なにかが蝕まれていった。夜は公園で眠り、午は働く。あるいはその反対だってある。薄汚れたわが身を繕う、そんなゆとりもない。週に何度かはネット屋のシャワーを使ったりもしたけど、それも回数が減ってった。仕事がなくなってきたからだ。とにかくどうしようもない。仕事はなくとも酒はやめられなかった。いつもの店で、酒を買い、公園で呑んでた。暗がりのなかのベンチに坐り、昔から抱いてる多くの空想とともにして呑む。気づいたときにはだれか
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