それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
酒を買いに走った。きょうはとびきりの酒にしようと。やがて酒を手に入れ、バス停のまえで停まった。精神病院へとつづく暗い坂が植木のなかで延びている。無人のバス亭でなぜ呑んだ。どうしてかはわからない。泥酔の果て、だれかがやって来た。そしてなにごとかを呶鳴りながら、ぼくの上着を剥いだ。ぼくはそれをどうすることもできない。なにも聞えない。なにもわからない。気がつくと、シャツ1枚で隧道を歩いてた。引き返してみる。ジョルノだけは無事だった。ぼくはそいつに跨がり、上着が落ちてないか探った。河床に引っ掛かってた。
かの女が辞めた翌日、おれは休み、クビになった。もうどうだっていい。それから飯場に潜り込み、あるいは
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