それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
まはゲームでぜんぜん触ってないことも。――それはみんないままで立ち聞きしてたことだった。
ドアーズってバンドの曲をやってた。
洋楽?
うん。
むつかしそう。
その日はずっとかの女の仕事を楽にできないかと立ち回った。でも、大したことにはならなかった。なんどか話かけただけだ。残業を終えて、服を着替えた。みんながかの女に話しかけてるあいだに駐輪場へ降り、かの女を待った。長いこと待った。よほど帰ろうかとおもったとき、かの女が降りてきた。フェイク・ファーのついた紫色のダウンと、カーキ色のズボンを穿いてる。かの女の笑顔がたまらなかった。
きょうで終わりだっ
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