それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
フックを用意してる。でも、母が2階から降りてきて、わって入った。そして、あしたカーテンを買うからといって泣いた。泣きながら2階へあがってった。父は作業場の灯りを消し、ぼくは眠ることにした。かの女はあした来るだろうかとおもいながら。
かの女は来なかった。ぼくは宿酔いでどうしようもなかった。入庫品を隠れて毀しまくった。踏んづけて、蹴飛ばした。かの女がやめるまであと1日しかない。この3ヶ月、なにもできなかった。その日、早退した。当然、主任は怒った。でも、それ以外にどうしようもなかった。かの女にできることはないだろうか、ぼくはそう考えつづけた。長い坂道を上りながら、どうやっておもいを伝えられるだろうか
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