それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
らされてだ。かの女が手袋を脱ごうとする。ぼくはそれをとめる。かの女の、裸の手、それをぼくが汚すわけにはいかなかった。ぼくはかの女に勝ちを譲って、仕事にもどった。どうやら、月の終わりに辞めてしまうらしかった。でも、ぼくはなにもいえなかった。こんな醜いでぶやろうが、かの女に近づいたってろくでもない。夜、かの女をおもって1篇の詩を書いた。そいつに『太った聖者』となまえをつけた。深夜まで父が作業をしてる。眠れやしない。こっちも音楽をかけ、酒を呷った。
うるさい!
その変な音楽消せ!
知るか、くそったれ!
父が室に入ってきた。ぼくは父に殴りかかった。拳がテンプルに決まった。父はフッ
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