それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
越しに世界を眺め、じぶんとはなんの繋がりもない話題に笑ったり、怒ったりしながら夜が更ける。水割りはハーフロックになり、それはやがてロックになって、やがてストレートに変わった。乾いた咽に即席ラーメンをぶち込むと、あとは昏倒して、気がつけば朝だ。壜に残った酒をあけ、ジョルノに乗る。倉庫街のかぜは痛いほど、鋭かった。ぼくはいつになれば身を立てられるのか。いつまでもなんの成長にもならない単純な仕事に身を窶すのか。あまりにも不安な朝だ。いつもみたいに2階へいき、仕事を始める。かの女は休み。そんなときだった。
    あの子、辞めるみたいやね?
 年増女が口を切り、30男の主任が答える。
    残業に
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