それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
にした。年があけて1月、いつものように量販店で酒を見てた。当然。おれはなにをやっているのかとおもった。もうずっとなにも書いてはない。詩も小説も絵もなにもかもが遠くにやられ、いまでは展ばすはずの手を酒瓶にやってる。もう書けないのかとおもう。だいたい、ぼくに情熱も真剣さもないんだ。ぼくよりも若いやつらが次々とデビューを果たし、いつまでもぼくは遅れてる。2年まえ、作家の弟子になったというのになにも進展がない。かれはぼくを褒めてはくれる。ただし、それまでだ。
冷たい家で、あたらしい酒を連れて室へいく。カーテンもない窓のむこうで父がまた作業してる。つよい灯りを焚いてだ。めざわりでしかない。PCの画面越し
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