それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
さもなくば死ぬしかない。25歳まで、あと2年しかない。ぼくは早熟というものにいちばんのあこがれがあった。でも、けっきょくいつものように酔いどれて眠り、次の朝に容赦なくぶち呑めされるんだ。いつもの棚づけが待ってる。入庫数がいかれてる。
早く、
早くして、
早くやって!
フロア主任がぼくはきらいだ。ねちねちとひとの陰口を叩き、つまらないギャグをやって笑いをせがむ。ぼくはつくり笑いで凌ぐ。やつは早く、早くと仕事を急かす。仕事は終わらない。個数が揃ってなかったり、品番がまちがってたり、いつもなにかがあった。家で呑む量は増えてった。ロッカーにも酒を置き、休憩時間の気つけ薬にし
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