それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
ャディーの仕事をはじめたんです。
それでこっちに来て。
ほんとは専門学校にいきたかったけど、
お父さんに「あほか!」っていわれて。
キャディの寮はわたしとおなじ九州の子が多くて。
かの女は、ほかのフロアの40男と愉しそうに話をしてる。かの女の身の上ばなしだ。ぼくだってかの女と、ああいう話をしてみたい。そうおもいながらずっと聞いてた。
高校時代はバンドやってて、
わたしベースもギターも弾くんですよ。
いまも楽器は持ってるんですけど、
いまはゲームばっかりしてて。
ぼくもギターをやってる、そういいたかった。それでもかの女はぼくが立
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