それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
。首に打撲痕がある。倒れた拍子に傷つけたのか、左頬に血が滲んでる。死んでるわけじゃない。冷たい夜だ。ふたたびジョルノに跨がって発進した。夜の森が黒々とあたりを被い、暴力の気配を滲ませてる。田舎町は退屈と狂気にまみれてる。それを救ってやれるのはぼくだけだ。けれど、それはぼくの錯覚だ。どこを走っても、このあたりに公衆電話はない。そして携帯電話をぼくはいまだに持ってない。だれかに報せたほうがいいのはわかる。でも、けっきょく帰ることにした。面倒はごめんだ。もしかしたらとは、おもう、やつとほんとうに友だちになれたかも知れないと。つぎの瞬間ぼくはそのおもいを嘔き棄てた。ひどい味がしたからだ。あんなやろうは好き
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