それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
が湧いてな、
おまえがどんな暮らししてるか、それでなんとなくわかった。──おまえには夢がある。
なるほどな、――でも話すことなんかないだろ?
いや、おまえに会いたがってる女がおんねん、おまえとおなじクラスやった子が!
きょうは疲れてるんだ、それにこんな太った姿は女に見られたくない。
いまから呼んでくる、待ってろよぉ!
やつは勝手に飛びだしていった。ガレージから自転車をだす音がする。沈黙。ぼくは待った。ビールはまだ2本ある。バーボンを鞄にしまって、それをちびりと始めた。もう夜の8時だ。木枯らしが鳴る。箒にすがりつくようなかぜの声がする。1本めをやって30分、2
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)