それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
ンが勝ったってことなんだよ。
  おまえはきっとかつて憐れなこのおれが、いまも憐れに酒を呑んでるからって声をかけたんだろ?
  からかってやろうって腹づもりなのはとっくにわかってるんだ、でもそんなことに意味なんかない。
 やつはしばらく黙ってビールを啜ってた。ぼくはバーボンの、〆の1杯を呑むところだった。こんなところには長居は無用だ。早く、早く離れなくちゃならない。あしたも仕事。主任の青白く、冷たい顔が浮かぶ。眼鏡のなかの、決して笑わない眼が浮かぶ。それからかの女のうつくしい顔が浮かぶ。おれはいかなくてはらない。
   おまえの書いてる詩、ネットでぜんぶ読んだんや。
   それで興味が湧
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