それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
ころはハーフ・ロックにしといた。これからなにが始まるのかがわからないからだ。こいつの腹づもりがどんなものか、様子を確かめたかった。――なにか話をしろよ。
   話?――そうやな。――おまえ、童貞やろ?
  だったら?
   女、欲しくないんか?
  欲しいよ、そりゃ。
   でも、なにもしてないんやろ?――おれはちゃんとやることやったで、大学の新歓で手に入れたで。
   でも、おまえはなにもできへんのやろぉ?
  生憎、万策尽き果ててね。
   うそ吐くな、努力しなかったんやろ?
  ハンデが大きすぎるんだ、生まれた星が好くないのかもな。
   ごまかすなや。
  なにも。
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