矢張り僕は宦官になりたい/森 真察人
 
分の珈琲が届いた 僕はいつものように珈琲に息を吹きかけはじめた
――その彼のこと、どう思ってる?
――どうでもいい。どうしてそんなこと訊くの?
僕は取り皿に珈琲を少し取り分けてから
――要するにさ、僕ぁ、宦官になりたいんだよ
と言った 少女はクスン、と笑ってそのまま右手を僕の左手に絡ませた 人差指 中指 薬指 小指 拇指(おやゆび)の順に丁寧に丁寧に――そのかわいらしい温もりを僕はよく感じて少女に珈琲をぶっ掛けた 少女は霧になって消えた。



自宅の浴槽の中でこれは夢ではない、と思った。

少女が浴室の窓を外側から拭いていた
右手にいつもの小説を持っていた
――
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