矢張り僕は宦官になりたい/森 真察人
――筋の判っているものを読んで楽しいのか
と訊くと
――何度読んでも判らないのよ
と言って 加えて
――知らない場所で、知らない人が死んでるの
と言った。
浴槽を出て身体を流しはじめると
ホース付きのシャワー・ヘッドがボトン、
と落ちた もげたのだ……その根本から!
ホースの生えていたところから
お湯が情けなく 血でも垂れるように流れていた
僕は蛇口の方からお湯を桶に入れて
窓を開けて
少女にぶっ掛けた すこし お湯が溢れて地面に落ちた
少女はクスン、と笑った
僕はもう一度 桶にお湯を入れた
今度は溢れないような量を。
そうしてもう一度 少女にぶっ掛けた
少
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)