矢張り僕は宦官になりたい/森 真察人
少女の家の浴槽の中でこれは夢だ、と判った。
僕を肩まで沈めるお湯はその面のすべてから苺の安っぽいにおいを放っていた(たぶん入浴剤の成分だ) 僕はこの少女の家の構造の対称性を想ってすべてが まさにすべてがキューブリックの画面のように対称的であれば良い、と思った
居間に出ると少女の父親が怒っていた 他人の家の風呂に入るなんてどうかしている、と
僕は身体を拭いて服を着て少女と喫茶店に向かった
――ここ、フランチャイズなのよ
少女はそう言いながら静かな卓を選んで僕と向かい合って座った 少女は腕にギプスをはめていた
――その腕、どうしたの?
――ボーイ・フレンドに折られたの
僕の分の
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