LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
。大学なんか、とっくに卒業しているのに、自分のことを一回生だと思って、朝に目が覚めると、大学に行く準備をはじめた。大学院を出てすぐに家を出たので、見慣れない部屋にいると思って、ようやく、自分が学生ではなかったことに気がついたのである。
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自分の年齢もおかしくなって、高校に通わなくては、と思って、自分が通っていた堀川高校のときの同級生の顔を思い浮かべたのだが、また混乱して、亡くなった同級生のことを思い出して、ふと、もう何年もまえのことだったことに気がついたのであった。40代になって、記憶障害がなくなった。
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しかし、記憶が障害になっているのではなく
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