LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
 
ときには、一つの色の絵具で、絵を描いていた。白い絵具で、海と空と雲を描いた。重ねた白い色には違いがあって、ぼくが小学校のときには、白い絵具だけで描いた絵を、絵として先生も認めてくれていた。中学でも、その手法で絵を描いていて、中学の美術の先生も、絵として


  〇


認めてくれていた。高校に入ると、ぼくの絵の世界も変化して、何色もの色の絵具を使ったものになった。ただし、色と色を混ぜることは、けっしてしなかった。絵具の色そのものが、ぼくには美しかったのだ。絵具を混ぜないというぼくの主張を、高校の美術教師は認めなかった。


  〇


美術の成績が下がって、ぼくも受験勉強
[次のページ]
戻る   Point(14)