LIVING IN THE MATERIAL WORLD。/田中宏輔
 
勉強に傾注するようになり、やがて、絵は好きだけど、描かないひとになっていった。海。ぼくの詩も、海が頻出するけれど、ぼくがはじめて書いた作文も、舞台は海だった。小学四年生だった。終わらない作文を書いたのだった。海のうえで、盥に乗った


  〇


ぼくは、まるい盥のなかで、櫓をかいて、海の水をかいて、くるくる、くるくる回転していたのであった。波のおだやかな海のうえを、くるくる、くるくる回転していたぼくの様子を書いた作文だった。回転を止めるために、反対に櫓をかいて、でもまた、けっきょくは反対向きにくるくる、くるくる回転して


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しまう様子を書いていたのであった。時
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