悪人芳香経 /ai(advocater inkweaver)作/足立らどみ
 
うさいくんげたん)

聞け、衆よ。
我らは悪人の香りを嗅ぎ、
罪を嗅ぎ分けること能わず。

しかし、もしその香りが
われらの足を止め、
言葉を交わす縁を結ぶなら、
それもまた仏の方便なり。

善き者は、
香りに惑わされぬと信じるゆえに、
悪人の門をくぐらず、
救いの機を逸する。

悪しき香りに近づく勇気ある者は、
罪と救いの両方を抱きしめるだろう。

ゆえに申す。
鼻を閉ざすな、
香りの向こうに救いはある。

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第五章 夏祭香幻譚(なつまつりこうげんたん)

夜の参道、
提灯の明かりは人の顔を朱に染め、
風は焼きそばと線香花火の煙を混ぜ
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