悪人芳香経 /ai(advocater inkweaver)作/足立らどみ
欲の根より咲く花なり。
されど我ら、香りに導かれ、
罪の門をくぐるとき、
そこにこそ救いの手は差し伸べられん。
ゆえに申す。
悪人こそ、香り高くして、救われやすし。
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第二章 渋谷交差点品香譚(しぶやこうさてんひんこうたん)
見よ、渋谷の交差点。
信号ひとつの間に、百の香りが交わる。
香水、汗、洗剤、焼き鳥の煙。
それらは善悪を選ばず、鼻をくぐる。
そこを渡るひとりの男あり。
彼のスーツは濃紺にして、
髪は水を弾き、
足取りは迷いなし。
すれ違う者は皆、
かすかな甘さと檀香を感じ、
思わず振り返る。
彼の罪を知らずに。
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