詩の博物館/ハァモニィベル
が無辺大の夢で逆かまひてゐるぢゃないか。〈光太郎〉
物思いの午後、めらめらと物思いのひるさがり、
残れる一本をくわえて、火を点ず
我が肺も 灰となりゆく
秘(ひそ)やかにレモンを探り、埃の中に一顆のレモン澄みわたる
冷さは熱ある手に快く 匂いはこの胸に沁み入る〈基次郎〉
なめらかな母韻をつつんでおそひくる青鴉
嘴の大きい、悪だくみのありさうな青鴉
うまれたままの暖かさでよろよろするお前は
ただ捲きこまれゆくままに捲きこんでゆく
この日和のしづかさを食べろ 〈拓次〉
僕はいつものやうに寝床に入つてゐる。何時の間にか雨が止んでゐる。
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