詩の博物館/ハァモニィベル
 
郎の屋根に雪ふりつむ。
ああ誰がそれを知つてゐるのか 〈達治〉



瞼の鎧戸をひたとおろし 眼球は醜い料理女である。
厨房の中はうす暗い。大脳の棚の下をそゝくさとゆきゝして
退屈なとろ火の上で 誰のためにあやしげな煮込みをつくらうといふのか
大脳はうす暗い。頭蓋は燻(くすぶ)つてゐる。
彼女は――眼球は愚かなのである。 〈太郎〉



大股過ぎるぢゃないか。頚(くび)があんまり長過ぎるぢゃないか。
何が面白くて 四坪半のぬかるみの中
羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。眼は遠くばかり見てゐるぢゃないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢゃないか。
素朴な頭が無
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