羽虫 。/田中宏輔
死んでいた。
ぼくは、ぼくのベッドの上で死んでいたのだ。
そうだ。
そして、ぼくは
ぼくの死体を部屋の隅に引きずっていったんだ。
あれだ。
あのシーツの塊。
ぼくは、シーツを引っぺがしに立ち上がった。
ぼくがいた。
目をつむって、口を閉じ
膝を抱いて坐っていた。
すえたものの、それでいて
どこかしら、甘い匂いがした。
それは、けっして不快な臭いではなかったけれど
腐敗が進行すれば臭くなるだろう。
ぼくは、ぼくの死骸を抱え運び
自転車の荷台に括りつけた。
ぼくの死骸を捨てにいくために。
(不連続面)
真夜中、
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