羽虫 。/田中宏輔
 
中、夜になると
ぼくは、ぼくの死骸を自転車の荷台に括りつけ
自転車を駆って、夜の街を走りまわる。

真夜中、夜になると
ぼくは、ぼくの死骸の捨て場所を探しさがしながら
自転車を駆って、夜の街を走りまわる。

踏み切り、
踏み切り、
真夜中、夜の駅。

ぼくの足は、いつもここで止まる。
ここに、ぼくの死骸を置いていこうか
どうしようか、と思案する。

でも、必ず
ぼくは、ぼくの死骸といっしょに
自分の部屋に戻ってくることになるのだ。



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