天国は展開の極意 四章/菊西 夕座
――明さんの迷った目には、煤も香を吐く花かと映り、蜘蛛の巣は名香の薫が靡く、と心時めき、この世の一切を一室に縮めて、そして、海よりもなお広い、金銀珠玉の御殿とも、宮とも見えて、令室(おくがた)を一目見ると、唄の女神と思い崇めて、跪き、伏拝む。
泉鏡花『草迷宮』
天国とは気楽にだらだらと生きて喜ぶ場所ではなく、永続する一瞬の最高潮における安らぎ
生きる人々が眠らなければならないのは、無意識の座敷に死者たちのくつろぎを許すため
どのようにせよ私も死を迎えたならば、愛しい奥方の、あるいは殿方の胸に頭をよこたえて
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