天気予報の詩(うた)/大町綾音
 
詩だ。予報にはない、感情の降水確率。
 当たるかどうかじゃない。空と同じく、人の心も変わりやすいのだ。

 それに、天気予報には美しい単語がある。
 「朝もや」「肌寒さ」「おだやかな南風」「雪のち晴れ」──
 どれも詩のタイトルになりそうな語句ばかりだ。
 もし私がラジオ局の気象担当だったら、毎日の予報にちいさな余白をつけたい。「今日の東京は、午後から雨の予報です。ですが、17時すぎに、もしかしたら一瞬だけ虹が見えるかもしれません」──そんなふうに。

 人はたぶん、正確さよりも、希望の行方を知りたいのだ。
 洗濯物が乾くかどうかより、心が濡れっぱなしじゃないかどうかを。


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