天気予報の詩(うた)/大町綾音
いまの天気アプリは、分単位で雨雲の動きを知らせてくれる。便利だ。けれどその精度の高さに、私はときどき不安になる。
何でも予測できる未来に、人は詩を求めることがあるだろうか?
「にわか雨があるかもしれません」というあの微妙な余白を、
AIはどこまで許してくれるのだろう。
窓を開ける。風が動いて、カーテンが軽く踊る。
予報どおり、雨が降るかもしれない。でも降らないかもしれない。
この不確かさのなかで、人は今日を選びとる。
傘を持つか、持たないか。
それは、人生という名の一行詩を、どんな調べで読むかということ。
そういうとき私は、そっと空を見上げて、思うのだ。
「これは、天気予報の詩」だと。
今日もまた、ひとびとの小さな選択が空模様と重なり合い、
言葉にできない感情たちが、雲のあいだから差す光を待っている。
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