はじまりが歌えているかどうかが/ホロウ・シカエルボク
 

俺がキッチンで魚の鱗を飛ばしているころ、君は花壇の雑草取りに夢中になっていた、キッチンの窓は花壇の正面にあるので、俺は君のそんな実直なまでの姿勢を存分に眺めることが出来た、草花への愛情、美しく咲くものだけが生きることを許されるテリトリー、俺は花壇という存在を恐ろしいとさえ思った、とはいえこの俺だって魚を捌いている途中なのだ、誰のせいでもない、そんな歌があったな、だけど時々、本当にそうかななんて考えたりもする、すでに定められてることについて考えを放棄するのは愚か者がすることだ、もちろん、そんな疑問符に得心のいく答えが得られたところで世界が変わるわけでもない、あらゆるものを形骸化させながら荒地を走
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