文学の崩壊/室町 礼
 
の影をもってい
る。残念なのは1970年代あたりまでの日本の作家や詩
人たちは人間には必ず二面性、つまり光が強く当たれ
ばくっきりと強い影ができることを知っていたから、
必ずその影を引きづって生きなければならない自分を
光と同時に描いた。だからことばに様々な陰影やさざ
波が生まれ深く心に響くものになっていた。
しかし今の作家、詩人たちはそういうものを頭からすっ
とばしている。ある意味、文学ではなく政治なのだ。
正義しかないのだ。そして自分は正義だと思っている。
そして不思議なことに(彼らにとっては当たり前なん
でしょうけど)必ず哲学者や思想家、詩人などの難解
なことばが、自
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