frantic/ホロウ・シカエルボク
 

朦朧とした午後には腐乱死体の夢を見て、俺の指先はとめどない記憶の中で踊る、安物の名前ばかりの遮光カーテンで隠された住処、寒波の中で吹き荒ぶ風に煽られて軋んでいる、プロコフィエフの旋律を訳もなく思い出す瞬間、幾つかのイメージが頭蓋の内側で孵化する音が聞こえる、それは文字にしてみるとふつ、ふつ、ふつというような感じで、極細の糸が切れる時の音によく似ている、もしかしたら人が死ぬときに聞こえる音もそんな音なのかもしれない、じっとして耳を澄ましているとそんな考えが頭に滑り込んでくる、人間の限界とはどこにあるのか、それは肉体のなのか、それとも精神のものなのか?それはきっと精神の方が先なのだろうと思う、精神
[次のページ]
戻る   Point(3)