いつかも歩いたその道を/ホロウ・シカエルボク
 
しているんだ、逃げているのさ、空っぽの心の中から―いや、俺は社会的な生活に文句があるわけじゃない、選んだのならグダグダ言わないでやり続けろよと思うだけさ、選んだことが間違いだと思うならどこからでも鞍替えすればいいんだ、辞めるのに適当な言い訳を考えることも何かの役には立つかもしれないぜ…川沿いの道に出よう、南へと歩いて、水面のほんの少し上を歩く道へと向かった、いつも誰か、なにかしらを嫌っているといった内容をわざわざ表札にして、おそらくは昔美容院か何かだったのだろう店舗のショーケースに置いてある陰気な建物の前を通り過ぎる時、中に居る男と目が合った、生まれてこのかた一言も口を聞いたことがないというような
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