NWSF傳畸ロマン カンテラ・サーガ、ピリオド3『泰西堂主人』?/?任勇梓 Takatoh Yuji
ないやうなものだつた。東堂兄弟には岡山の實家との確執があつた。酔ひどれの父、ほゞ女手一つで兄弟を育て上げてくれた母…。まあそこまではよくある家族の肖像だが、問題はそこから先。浄治は東京で古本屋を営み始めた兄・進吾とも反目し、その内に、「浄の會」と稱する秘密結社を立ち上げた。その結社は、極端な尊王思想とキリスト教異端が綯い交ぜになつた畸つ怪な思想を持つてゐた…。
「それで、なんでオーギュスタンの命を付け狙ふんです?」「岡山が誇る、平賀元義(元義は?住教の影響を受けて、隠微な勤皇思想の支配下にあつた)の扁額を、フランスに持ち帰つたのが彼の氣に障つたらしいのです。私の事を國賊と散々なじりました。元
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