de verbo ad verbum / nihil interit。 ──大 岡 信論/田中宏輔
 
は、人間が感情や観念といったものに姿を変えたり、感情や観念といったものが人間の姿をとって、ぼくたちの前に現われたりもしますが。しかし、そうして、ものたちは場所を変え、時代を越えて生き延びるのです。詩人や作家、哲学者や思想家といった人々の著作物の間を、つぎつぎと渡り歩きながら、あるいは、飛び渡りながら、生き永らえていくのです。


だれにも見えない馬を
ぼくは空地に飼っている
ときどき手綱をにぎって
十二世紀の禅坊主に逢いにゆく
八百年を生きてきた
かれには肉体の跡形もない
かれはことばに変ってしまった肉体だ
やがてことばでさえなくなるはずで
それまでは仮のやどり
ことばの庇
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