de verbo ad verbum / nihil interit。 ──大 岡 信論/田中宏輔
 
の庇を借りているのだという
華が開き世界が起つ
とかれがいえば
かれという華が開きかれという世界が起つのだ
ことばとして ことばのなかで ことばとともに
開かれまた閉じ
浮かびまた沈み
生まれたり殺されたりしながら
かれはことばでありつづけ
ことばのなかに生きつづけて
死ぬことができない
地にことばの絶えぬかぎり
かれは岩になり車輪になり色恋になり
血になり空になり暦になり流転しつづけ
そのためにかれは
自分が世界と等量であるという苦い認識に
さいなまれつづけねばならないのだ
何が苦しいといって
ことばがわが肉体と化すほどの
業苦はない
人間がそれを業苦と感
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