de verbo ad verbum / nihil interit。 ──大 岡 信論/田中宏輔
 
会いしたときに、ぼくが先生に対して持ちました印象でもあり、いまもなお持ちつづけております印象でもあります。

 しかし、こういった視線には、むかしはよく出遭ったものだと思われました。もしかすると、先生に対して、たいへん失礼なことを書くことになるのかもしれませんが、ぼくには、子供がひとを見つめる目に、ものをじっと見つめる目に、じつによく似ているような気がしたのです。先生の「額のエスキース」という詩の中に、「女性の中に眠っている/孤独な少年はめざめるのだ」といった詩句がありますが、先生が、ひとやものをじっと見つめられるときには、先生の中にいる少年が目を覚ますのでしょう。そして、その少年が、先生の目
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