詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
と、ゆる
いカーブのつづく海辺の道は、この島の輪郭をほぼ
正確に描いていた。
次郎さんの案内で、半日かけて右回りに島を一周し
たあと、翌日は左回りに半周して、そこから先は、
右も左も同じであることに気づく。さらにこの島に
は、海のある方向と、山のある方向しかなくて、夕
日が海に沈むまで、旅人は、西も東も定められない
不安を抱くことになる。

東京から一八〇キロ。
竹芝桟橋から「かめりあ丸」に乗船して、三宅島の
次郎さんを訪ねた。
団塊世代の次郎さんが、たったひとりで三宅島に移
住したのは五年前のこと。
「山と海しかないとこだからね」たしかに、山も海
もひとつずつしか
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