詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
チャリだった。
 すでに半分近く埋まった駐車場を、中川さんのまるい背中を追いかけて走るわたしは、いつになく長い梅雨が明けたことも知らずに、いきなり七月の炎天下に投げ出されたような気分だった。ことしの夏はおもわぬ方向からやって来たのだ。

 シルバー人材センターは全国各地にあって、六〇才以上のはたらく意欲のあるひとであればだれでも入会することができる。
 定年後も退職せずに六五才まではたらいたわたしは、第二の職場を求めてパートやアルバイトの面接をいくつか受けたがすべて落とされた。たとえ見た目はわかくても六五才を超えるとそんなものかと納得するしかなかった。それでわたしの日課は日に三度の犬の散歩
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