詩小説『雨の日の猫は眠りたい』その1。/たま
 
じめて知るのだった。

「ほな、ぼちぼちやろか。アンタ、カギかけといてや。」
 そういって立ち上がった中川さんから、重い南京錠をうけとるのはわたしだったりしても、スチール製のパイプ椅子から腰をあげた中川さんの腰は曲がったままで、歩くすがたもパイプ椅子に腰かけた状態とほぼおなじだった。
 朝のトイレ掃除はいつも三人だった。
 詰め所のとなりのトイレというか。トイレのとなりにある詰め所の倉庫の入口みたいな観音開きの扉といっても、倉庫のなかに詰め所があるから倉庫そのものなんだけれど。その重い鉄の扉をロックしてトイレ掃除を終えると、もうひとつ北のはしにトイレがあって。ひと休みしたあと、ふたたび詰
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