永らえる夜の中で/ホロウ・シカエルボク
 
手はどこか緊張した面持ちで奇妙なことを言った、今日お客さんたちのお部屋に、夜中に誰かが訪ねてくるかもしれない、でも決してドアを開けてはいけないよ、と伝えるその声は少し震えているようにも感じられた、ああ、うん、と、二人はわからないながらも適当に返事をして、車を降りた、二人がホテルへ消えて行くのを見届けて運転手はもう一度後ろを振り返り、それから二人の後ろ姿を眺め、ひとつ長い溜息をついてそれからその場を離れた、(あの二人は、あの船着き場で誰かを殺したに違いない)子供の頃からずっとその街で暮らしている運転手にはそのことがわかっていた―ホテルの部屋に戻る頃には二人は運転手の言葉などすっかり忘れていた、買い置
[次のページ]
戻る   Point(0)