仮名桜待ち惚け/万願寺
って、灰で焼き、甘すぎる黄色い芋をふんだんに使ったシチューの炊き出しをおこなう。視覚草たちも、ムーンチャイルドも、かれらにはよく懐く。道理だ。炊き出しの列に並んでいたものが、数ヶ月後には運営側にまわっているのはざらで、仮名桜に吸い寄せられるようにその全ての行いに魅了されてしまう種、個体があとを絶たない。
それでも仮名桜の個体自体は、数年で命を終える。絶妙に個体数調整をしていて、同時に存在するのは五十五体までと決まっているらしい。記録堅固隊のアフリカ象の筆記が仮名桜の担当だが、個体は五十四か五十五で、該当欄がそれ以外の数字になることは無い。こちらの星で星害に耐え、奇妙な思考で逆境を信仰の足場とし
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