それだけが/ホロウ・シカエルボク
 

ひとりになって六年目の夏
深夜にふと目を覚ますと
部屋の机の引出を漁っている影に気付いた
誰だ、と反射的に口にすると
影は驚いて振り返り
こちらに包丁を突き出した、黙れということだ
じっとしていると近寄って来て
カネ、カネと言いながら腕を包丁で軽く突いた
近過ぎるな、と思った
腕を振ってみると綺麗に当たって
強盗は吹っ飛んだ
包丁を拾って、それから

強盗を解体した

強盗は中年の男だった
日本人じゃないみたいな感じがした
そういえば「カネ」のイントネーションも
少しおかしかった気はする
大変に骨が折れたけれど
久しぶりで楽しい作業だった
浴室を使った
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