それだけが/ホロウ・シカエルボク
 
ていたから

鼠をそれからどうしたのかよく覚えていない

そんな季節が終わり
街に放り出された
人に会う必要のないバイトを選んで
どんな実感もないままに暮らした
これが人生というものなのか
時々はそんなことも考えたけれど
だからって違う道など考えもしなかった

十九の時、母が死んだ
二十一の時、父が死んだ
真面目に生きていればきっといいことがある、そう言い続けた二人は
結局どんないいことにも出会わないままだった
おかげで若いうちから葬式のことには詳しくなったけれど
もう身寄りなどひとりも居なかった
相変わらずバイトをしながら
ひとりになった家で生きた


[次のページ]
戻る   Point(1)