海/暗合
していない。別に嫌いではない。母親は母親なりに正しいと思う方法で俺に接したのだ。でも母親は俺の泣き声を聞いてくれなかった。やり返してから、もう母親は俺のことを殴らなくなった。
雨がますます激しくなる。きっと海も、もっと荒れるのだろう。荒れた海の中では蛸が岩に叩きつけられて青い血を流し、海をますます青くさせる。夜になれば、海は闇さえ溶かすのだ。小さいときにみた夜の海を今日まで覚えている。黒くてサーサーとため息のような波の音がした。俺はその黒の中に溶けてしまいたかった。あなたの瞳も同じ様な黒だった。
学校へ行くとあなたはいなかった。いつもは遅刻しないあなたの席が空っぽだった。
先生はいつ
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